のシンポジウムに参加してきました。
自分は「複合性局所疼痛症候群Ⅰ型」という病気を持っていて、麻酔科に通って治療しています。
体に異常がなくても激痛を伴ったりする謎の多い病気で、投薬と点滴で緩和をしています。
突然片足に激痛が走って、その後整形や膠原病科などで診断して全く分からず、
北里大学病院に来てやっとこの病名に当たりました。
症状は足に何か刺さったり、足の中側から筋肉をきつく縛り付けられているような激痛でした。
それが背中まで行った時にはもうどうなることかと思いましたが。
数年前だったので他病院で診断できず発見が遅くなったので治療は難しいですが、
今はそれなりに元気に過ごしています。歩ける距離は短いですが。
あと雪が降るととても痛い。
もし、同じように整形外科等では原因不明の痛みに悩まされている人が居れば、
麻酔科・またはペインクリニックのある病院に行ってみることをお勧めします。
紹介状を書いてもらって。
今回の講演は担当医の先生に教えていただいたので、行ってきました。
定員は180人のところ300人ぐらい応募があって参加出来なかった方も多いそうなのですが、
センター長挨拶で「YouTubeで配信とかできませんかね?」って言ってたのでもしかしたら
配信されることもあるかもしれません。
痛みの研究というのはここ5年ぐらいで研究が進んだそうで、それ以前は痛いといえば
バファリン、ロキソニン、ボルタレンぐらいしか対応できる薬がなかったそうです。
自分はロキソニンは全く効きませんでした。
講演の詳細は配布された資料とメモを合わせた物から書き出しました。
◆ 痛みが意味するもの
金井先生
今回の講演では痛みに関する一般的な話でした。
前提として心因性と思われていたものもすべて痛みと正しく捉えて、
感情論ではなく正しく治療することが必要ということでした。
痛みには2面性があり、身体損傷を伴うものと、負の情動による2面を正しく治療することが
必要で、痛みの種類によって治療方法、対応、薬も異なってくるとのことです。
・痛みの定義
痛みには身体損傷に伴うものと負の情動による2面性がある。
全ての痛みは感覚と感情の共存。
・痛みの反応
痛み刺激
↓
[受容器]
体神経系 皮膚、骨格筋、腱、靭帯、骨、関節
内臓神経系 内臓被膜、平滑筋、心筋
↓
[中枢神経系]
脳、脊髄
・感覚:痛みの部位、強さ、性状
・感情:不安、緊張、抑うつ、嫌悪など
[末梢神経系](脳、脊髄に出入りする)
↓
[効果器]
内臓神経系 平滑筋、心筋、内分泌腺、消化腺、汗腺、涙腺
体神経系 骨格筋
↓
痛み反応
高血圧、動悸、浮腫、めまい、発汗、冷感、便秘、下痢
筋収縮、関節拘縮
痛み行動
行動制限、安静、運動、逃避、通院、利得行動
痛みには感覚、感情の両面があり、それを認知・評価する。
不安によっても痛みは増幅する。
安静にしていると悪化するケースの痛みもある。
・痛みの種類
痛み刺激には、機械刺激、化学刺激、温度刺激の3種類がある。
機械刺激:物理的な力による刺激。(安静で悪化する場合は別の原因もある。)
化学刺激:化学物質による刺激、安静時持続する痛み。
温度刺激:温度による刺激(通常15℃以下、45℃以上)。知覚過敏など?
非神経組織の損傷のある場合(侵害受容性疼痛)
内臓の痛みは場所が特定しにくいことが多い。別の場所で関節痛を伴うことがある。
神経障害の痛み(神経障害性疼痛)
損傷のないところで痛む。刺すような痛みやビリビリとした痛み等。
感覚神経、運動神経、交感神経と巻き込んで痛むので、複雑で対応が難しい。
心因性の痛み(心因性疼痛)
これは現在国際定義がないということ。
身体損傷を伴うものと伴わないものがある。
痛みの種類によって有効な薬が全く異なってくる。
一般的には3ヶ月~6ヶ月過ぎると慢性痛として扱う。普通の検査では分からないものが多い。
痛みはあまり放っておくと、関節破壊が進むので痛みが続くなら必ず受診すること。
慢性痛は痛みを抑制する物質(ドーパミン等)の機能が低下していることが多いので、
麻酔で抑えたり、運動療法で刺激をして機能を回復させる必要がある。
・痛みの対応
急性疾患を知らせる痛み →原因疾患の精査と治療、慢性痛の予防
慢性疾患に伴う痛みの持続 →原因疾患の評価、慢性痛の治療
明らかな身体損傷のない痛み
疾患治療後の慢性痛 →慢性痛の治療
機能性疼痛症候群 →慢性痛の治療
(中枢神経障害性疼痛)
単なる身体負担による痛み →負担の軽減(生活負担によるもの)
精神疾患による痛み →精神疾患の治療
診察を必要とする急性痛
・初めて経験する強い痛み、強い安静時痛と夜間痛、次第に強まる痛み、
次第に広がる痛み → 重要疾患がかくれてる可能性
・以下の症状を伴う痛み
意識低下、麻痺、嘔吐嘔気、出血、発汗・悪寒、体重減少(5-10%)、呼吸困難
・以下の病気を伴う痛み
心血管系疾患(狭心症、腹部大動脈瘤等)、悪性腫瘍、
免疫不全症(長期ステロイド服用等)
痛みの治療
効果は患者側にしか分からない。
・鎮痛薬の適応 痛みが30%落ちなければ有効でない。
・医療用の麻薬 鎮痛薬で効果がない場合、負の情動のコントロール
薬物治療
痛み刺激 [受容器] 鎮痛薬
感覚・感情 [中枢神経系] 鎮痛薬、向精神薬
痛み反応・行動 [効果器] 睡眠薬、難下薬、降圧薬、中枢性筋弛緩薬、ステロイド
主な鎮痛薬
・アセトアミノフェン、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、ステロイド、中枢性筋弛緩薬
オピオイド、抗痙攣薬、抗うつ薬※、抗不安薬
※ 神経障害性疼痛に効く
その他治療
[受容器]
局所麻酔薬散布、末梢神経ブロック、内臓神経叢ブロック、
トリガーポイント注射、光線照射、電気刺激
[中枢神経系]
電気刺激、硬膜外ブロック、脊髄くも膜下ブロック、傍脊推体性神経ブロック、磁気刺激
[効果器]
交感神経節ブロック、星状神経節ブロック、光線照射、局所麻酔薬散布、
末端神経ブロック、ボツリヌス毒素、トリガーポイント注射、
リハビリテーション、運動療法、行動療法
森田療法
神経質に対する精神療法の紹介
ロゴセラピー
生活の中で「生きる意味」を充実させる。
中脳辺縁ドーパミン系
快の情動系、報酬回路、急性痛反応
内因性オピオイドを出す機能が脳機能障害性疼痛で活動低下
・心地よい生活、趣味を楽しむ
・自分へのご褒美
・一時的な痛み刺激(運動、神経ブロック)
→ ドーパミンをより出すため
◆ 緩和ケアにおける痛み
林先生
緩和ケアの実情とがんの痛みに対する治療についての話でした。
がんの痛みをコントロールして、生活の質を改善することを目的とするということです。
緩和ケアをするのは苦痛が発生している患者に対してで、末期等は関係ないということです。
・緩和ケアとは
苦痛を和らげることを目的に行われる医療ケア
対象:生命を脅かす疾患による問題に直面した家族・患者
内容:早期から身体・精神・社会・霊的問題※を評価し対応
※ 霊的問題:宗教等に関連する問題
目的:ケアによる生活の質を改善する
メンバー:緩和ケア医、精神腫瘍医、がん専門看護師、医療ソーシャルワーカー、
管理栄養士、薬剤師、理学療法士、臨床心理士等
緩和ケアではチームで患者を診る。
生命を脅かす疾患
悪性新生物(がん)、慢性心疾患 非代償期、慢性呼吸不全、慢性腎不全、神経変性疾患、
集中治療室で回復が見込めない病態
昔はがん治療後の終末に向けて緩和ケアを行っていたが、最新では診断時から
緩和ケアを行い、状況に応じて治療・緩和ケアの比率が変化していく。
「緩和医療」≠「終末期医療」 となっている。
緩和ケアはどのようなケアを受けられるか
1.自分の病気を知り、治療法の選択を助ける
2.痛みや呼吸苦など辛い症状を取り除くケア
3.日常生活を取り戻すケア
・食事を楽しむケア
・苦痛や不快感を最低限にするための排泄のケア
・夜にぐっすり眠れるようにするケア
・好きな姿勢をとったり、自然な体位や寝返りをうつケア
・体を綺麗に保つケア
・患者さんにとって心地よい環境を提供するケア
4.こころのふれあいを大切にし、元気になるケア
5.家族へのケア
6.自宅でも緩和ケアをうけられるようにする
・がんの痛みの特徴
がんで出現する苦痛は
・身体的苦痛
痛み※、痺れ、呼吸苦、腹部不快・膨満感、全身倦怠感、
嘔気・嘔吐、食欲不振、咳・痰、口渇、味覚異常
※ 組織損傷を伴う、或いは組織損傷のように表現される不快な感覚と感情の体験
・精神的苦痛
不安、焦燥、孤独感、恐怖、鬱、怒り
・社会的苦痛
仕事、家庭、対人関係、経済上の苦痛(遺産、借金等)
・霊的な苦痛
自己の存在と意味の消失から生じる苦痛
がん性痛の種類と発痛機序
1.がん自体が原因となる痛み
2.がん治療が原因となる痛み
3.その他の原因による痛み
→がん性痛は、あらゆる痛みが混在している状況
がん性痛は持続する痛みとある時期に出る突出痛があって、治療にはコツがある。
・がん性痛の治療の基本
1.薬物治療
・非オピオイド性鎮痛薬
・鎮痛補助薬
・オピオイド性鎮痛薬(いわゆる麻薬)
2.神経ブロック治療
がん性痛の目標
第一目標:夜間しっかり眠れること
第二目標:安静時は痛みが少ないこと
第三目標:動いても痛みが少ないこと
WHO三段階除痛ラダー
第一段階:非オピオイド鎮痛薬
第二段階:弱オピオイド±非オピオイド鎮痛薬±鎮痛補助薬
第三段階:強オピオイド±非オピオイド鎮痛薬±鎮痛補助薬
非オピオイド鎮痛薬
・アセトアミノフェン :鎮痛、解熱
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs※) :鎮痛、解熱、抗炎症
※ ロキソニン
鎮痛補助薬
・抗けいれん薬 :神経障害痛を軽減
・抗うつ薬 :神経障害痛を軽減
・抗不整脈薬 :神経障害痛を軽減
・NMDA受容体拮抗薬 :オピオイドの耐性、痛覚過敏に拮抗
・コルチコステロイド :骨痛、神経・脊髄の圧迫痛を軽減
・抗不安薬 :痛みによる不安の軽減
・中枢性筋弛緩薬 :筋肉痛を軽減
・Bone Modifying Agents :骨腫瘍・骨転移の痛みを軽減
・その他
オピオイド
弱オピオイド:依存性少ない
リン酸コデイン、ペチジン、トラマドール、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、
ブトルファノール、エプタゾシン
強オピオイド:依存性高い
モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、タペンタドール、メサドン
主に脳と脊髄にあるオピオイド受容体に結合して鎮痛作用を発揮する薬
がん性痛の特徴とオピオイドの使用法
定時薬:長時間作用性オピオイド
頓用薬:短時間作用性オピオイド
オピオイドの血中濃度と薬理作用の関係
オピオイド血中濃度低
↓ 便秘、嘔気
↓ 鎮痛
↓ 催眠
↓ 意識障害、厳格、依存
↓ 呼吸抑制
オピオイド血中濃度高
処方はオピオイド+制吐薬+緩下薬
オピオイドに対する誤解
・中毒について:医師の指導の下で適切に使用した場合は中毒になるのは0.2%以下
・幻覚について:適正に使用すれば混乱や幻覚をきたすのは5%以下
・耐性について:長期間の使用で耐性が生じることはあるが耐性よりも痛みの増強に起因する
ので、痛みがない状態まで薬を増やすことが出来る。
・寿命について:使用量と予後に相関はない。
・麻薬使用は末期?:早期でも痛みの強さに応じて適応を判断する。
薬の効きが弱い場合神経ブロックを適応する。
神経ブロック(区域麻酔)の利点・欠点
利点
・強い鎮痛
・鎮痛薬減量
欠点
・侵襲的 →熟練麻酔医の対応
・効果変動 →定期的麻酔評価
1.薬物治療
・非オピオイド性鎮痛薬
・鎮痛補助薬
・オピオイド性鎮痛薬(いわゆる麻薬)
2.神経ブロック治療
がん性痛の目標
第一目標:夜間しっかり眠れること
第二目標:安静時は痛みが少ないこと
第三目標:動いても痛みが少ないこと
WHO三段階除痛ラダー
第一段階:非オピオイド鎮痛薬
第二段階:弱オピオイド±非オピオイド鎮痛薬±鎮痛補助薬
第三段階:強オピオイド±非オピオイド鎮痛薬±鎮痛補助薬
非オピオイド鎮痛薬
・アセトアミノフェン :鎮痛、解熱
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs※) :鎮痛、解熱、抗炎症
※ ロキソニン
鎮痛補助薬
・抗けいれん薬 :神経障害痛を軽減
・抗うつ薬 :神経障害痛を軽減
・抗不整脈薬 :神経障害痛を軽減
・NMDA受容体拮抗薬 :オピオイドの耐性、痛覚過敏に拮抗
・コルチコステロイド :骨痛、神経・脊髄の圧迫痛を軽減
・抗不安薬 :痛みによる不安の軽減
・中枢性筋弛緩薬 :筋肉痛を軽減
・Bone Modifying Agents :骨腫瘍・骨転移の痛みを軽減
・その他
オピオイド
弱オピオイド:依存性少ない
リン酸コデイン、ペチジン、トラマドール、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、
ブトルファノール、エプタゾシン
強オピオイド:依存性高い
モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、タペンタドール、メサドン
主に脳と脊髄にあるオピオイド受容体に結合して鎮痛作用を発揮する薬
がん性痛の特徴とオピオイドの使用法
定時薬:長時間作用性オピオイド
頓用薬:短時間作用性オピオイド
オピオイドの血中濃度と薬理作用の関係
オピオイド血中濃度低
↓ 便秘、嘔気
↓ 鎮痛
↓ 催眠
↓ 意識障害、厳格、依存
↓ 呼吸抑制
オピオイド血中濃度高
処方はオピオイド+制吐薬+緩下薬
オピオイドに対する誤解
・中毒について:医師の指導の下で適切に使用した場合は中毒になるのは0.2%以下
・幻覚について:適正に使用すれば混乱や幻覚をきたすのは5%以下
・耐性について:長期間の使用で耐性が生じることはあるが耐性よりも痛みの増強に起因する
ので、痛みがない状態まで薬を増やすことが出来る。
・寿命について:使用量と予後に相関はない。
・麻薬使用は末期?:早期でも痛みの強さに応じて適応を判断する。
薬の効きが弱い場合神経ブロックを適応する。
神経ブロック(区域麻酔)の利点・欠点
利点
・強い鎮痛
・鎮痛薬減量
欠点
・侵襲的 →熟練麻酔医の対応
・効果変動 →定期的麻酔評価